建設国保に加入していても大丈夫?「健康保険被保険者適用除外申請」を正しく理解する
結論から言います。
法人でも、建設国保(国民健康保険組合)に入り続けることは可能です。ただし、年金事務所に「健康保険被保険者適用除外申請」を出して承認を受けていることが前提です。
この手続きを踏んでいれば、協会けんぽに入り直す必要はありません。
逆に言えば、この申請をせずに建設国保だけ加入しているケースは、社会保険の「適切な加入」とは認められないのでご注意ください。
そもそも、なぜこの手続きが必要なのか
法人を設立した瞬間から、健康保険(協会けんぽまたは組合健保)と厚生年金への加入が法律上義務になります。
個人事業所であっても、常用労働者が5人以上いれば同じです。
つまり、何もしなければ自動的に協会けんぽの適用を受けることになる。
それでも建設国保を選びたいなら、「うちは健康保険の適用から除外してください」と年金事務所に届け出て、正式な承認をもらう必要があります。
これが健康保険被保険者適用除外申請の本質です。
建設国保は全国建設工事業国民健康保険組合など、建設業に特化した保険組合です。
給付内容が手厚かったり、保険料の計算方法が協会けんぽと異なる場合もあって、長年建設国保で守られてきた従業員を多く抱える会社もありますよね。
そういった会社が法人化したときに、何も手続きをせずに「今まで通り建設国保で」と思い込んでいると、後から大きな問題になります。
「適用除外承認」を受けていないと何が起きるか
現場入場の問題が直結します。
国土交通省の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」(国土交通省公式ページ)では、適切な保険への加入が確認できない作業員について、特段の理由がない限り現場への入場を認めない取り扱いが明記されています。
平成29年度以降はこれが元請に対する指導として定着しており、下請として入る会社にとっては死活問題です。
実務でよくあるのが、法人成りしたタイミングで手続きを失念するケースです。
「個人事業主のときから建設国保に入っていたから、そのまま続けていれば大丈夫」と思っていた社長が、元請から「適用除外承認の書類を出してほしい」と言われて初めて気づく、というパターンを私は何度も見てきました。
手続きの流れと必要なもの
手続きの窓口は管轄の年金事務所です。
採用した従業員が建設国保に加入している場合、その従業員を雇い入れた日から5日以内に申請することが原則です。
この期限は厳格で、遅れると問題になることがあります。
申請に必要なのは主に、事業所の登記情報や雇用関係を確認できる書類、対象となる従業員の建設国保の加入証明といった書類ですが、必要書類の詳細は管轄の年金事務所に直接確認してください。
承認が下りると、その従業員は「厚生年金には加入するが、健康保険は建設国保のまま」という状態になります。
これが、国交省の言う「国民健康保険組合と厚生年金保険の組み合わせ」であれば問題ない、という意味です。
なお、この手続きはあくまで健康保険の適用を除外するものです。
厚生年金は別途、年金事務所で適用事業所の届け出と被保険者の資格取得届が必要になります。
社会保険の手続きは健康保険・厚生年金・雇用保険の三つがそれぞれ独立していますので、一つを処理したからといって全部済んだわけではない点も頭に置いておいてください。
現場で「適切な保険」かどうかを確認するフローチャートも活用できる
国土交通省は「適切な保険」の確認シート(フローチャート形式)を公開しています。
自社の従業員や下請の作業員が本当に適切な保険に入っているかを確認したいときに便利なので、経理担当者は一度目を通しておくと安心です。
特に一人親方が混在している現場では、請負か雇用かの実態判断が絡んできて複雑になりますから、不安なときは最寄りの社会保険労務士会に相談するのが確実です。
各都道府県に相談窓口が設けられています。
また、令和6年12月に健康保険証が廃止されたことを受けて、現場での健康保険加入確認の方法にも変化があります。
国土交通省は令和6年11月に「健康保険証の廃止に伴う現場作業員の健康保険の加入証明書類について」という事務連絡を発出しており、マイナ保険証やその他の証明書類で確認する方向が示されています。
現場管理担当者は最新の運用を確認しておいてください。
法定福利費の見積書への記載も忘れずに
社会保険加入の問題とセットで出てくるのが、見積書への法定福利費の内訳明示です。
健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の事業主負担分を見積書に明示することが、業界全体の取り組みとして求められています。
建設国保に加入している場合も、健康保険料相当分と厚生年金保険料・雇用保険料の事業主負担分を明示する必要があります。
これをきちんと積み上げないと、下請として法定福利費を実質的に負担できなくなって、社会保険加入維持が困難になる悪循環に陥ります。
令和8年3月の事務連絡では「子ども・子育て支援金」の取り扱いについても新たに方針が示されていますから、最新の料率や取り扱いは国土交通省や日本年金機構のページで確認してください。
よくある質問
Q1. 法人成りしたのが5年前で、適用除外申請をしていなかった場合どうなりますか?
さかのぼっての申請対応については年金事務所の判断になります。
まず管轄の年金事務所に現状を説明して相談してください。
状況によっては社会保険料の遡及徴収が発生する可能性もあります。
詳細は社会保険労務士に早めに相談することをお勧めします。
Q2. 一人親方として建設国保に加入していますが、法人化したら手続きが変わりますか?
変わります。
法人になった時点で社会保険の強制適用事業所になるため、設立後5日以内に適用事業所の届け出が必要です。
建設国保を継続したい場合は、それと同時に適用除外申請を年金事務所に出す流れになります。
一人親方のうちは国民健康保険と国民年金への個人加入が基本ですが、法人化後は別の話です。
Q3. 現場に入るとき、建設国保に加入していることをどう証明すればよいですか?
令和6年12月の健康保険証廃止後は、マイナ保険証や、建設国保組合が発行する資格確認書等が証明書類になります。
具体的な書類の取り扱いは元請の現場管理方針や最新の事務連絡を確認してください。
詳細は建設業フォローアップ相談ダイヤル(0570-004976)でも確認できます。
Q4. 適用除外承認を受けていれば、経審や許可の審査で問題になりませんか?
適切な手続きを経て建設国保に加入している場合、「適切な保険」と認められます。
経営事項審査(経審)でもW点(社会性等)の加点対象となる社会保険の加入状況は、この適用除外承認の有無が確認ポイントになります。
承認書類は大切に保管しておいてください。
この記事は情報提供を目的としており、手続きの代行や法的助言を行うものではありません。
最新の情報は各行政機関の公式サイトでご確認ください。