改正建設業法「労務費の基準」、2025年12月の全面施行前に何を準備すべきか?
2025年12月、改正建設業法がいよいよ全面施行されます。
その柱のひとつが「労務費の基準」に関する規定です。
国土交通省 関東地方整備局はこの施行に先立ち、2025年8月に説明会の開催を発表しました。
関東圏で建設業を営む会社であれば、まずこの説明会の情報を確認しておくことが先決です。
「法改正は顧問の先生に任せてある」という社長も多いと思います。
ただ今回の改正は、許可の有無や経審の点数に直結する話ではなく、下請契約の中身そのものに国が踏み込んでくる内容です。
経営者として、自社の契約実務がどう変わるのかを自分の言葉で説明できる状態にしておく必要があります。
「労務費の基準」とは何か、まず整理しておきましょう
今回の改正で新設される労務費の基準とは、簡単に言えば「適切な労務費を下請業者に支払うよう元請に義務づける」仕組みです。
これまでも「不当に低い請負代金の禁止」は建設業法に規定されていましたが、抽象的な表現にとどまり、実態としては機能しにくい面がありました。
今回の改正ではより具体的な基準を設け、元請が労務費を不当に圧縮した契約を締結することを明確に禁止する方向に進んでいます。
現場の実態として、たとえば型枠工事を専門とする下請業者が1人工あたり2万5,000円で単価契約を結んでいるケースで、元請がその単価を根拠なく切り下げてくるようなことが起きていました。
今後はこうした取引慣行に対して、法的な歯止めがかかることになります。
発注側の立場にある元請会社にとっては、契約書の作り方そのものを見直すきっかけになる改正です。
12月施行まで、何をすれば良いのか
まず動いてほしいのが、自社が締結している下請契約の棚卸しです。
特定建設業許可を持ち、4,500万円(建築一式は7,000万円)以上を下請に出している会社は、すでに下請取引の適正化義務が課せられています。
今回の改正はその対象をさらに広げ、一般建設業の会社にも実質的な影響が及んでくる可能性があります。
次に確認したいのが、自社の工事台帳や原価管理の精度です。
「労務費がいくらかかっているか」を正確に把握できていない会社は、新しい基準への対応以前に、そもそも契約の妥当性を判断する根拠を持っていないことになります。
経審でも完成工事原価の内訳が審査に関わってきますので、この機会に経理部門と現場管理の連携を見直してみることをお勧めします。
そして何より、8月に発表された国土交通省 関東地方整備局の説明会(https://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/)を活用してください。
現時点で開催日程・会場・申込方法などの詳細はPDF資料に掲載されていますが、時期が近づくにつれて情報が更新されることが多いため、同局の建設産業ページを定期的にチェックしておくことが重要です。
元請・下請どちらの立場でも対応が必要です
「うちは下請専門だから関係ない」と思っている会社もあるかもしれません。
しかし、今回の改正では下請側にも適切な労務費を確保して労働者に支払う義務が課されることが想定されています。
つまり、元請から受け取った金額を現場作業員にきちんと還元しているかどうかが問われる局面が出てきます。
社会保険の加入状況と合わせて、改めて自社の賃金水準を確認しておく必要があります。
また、監督処分の観点からも無視できません。
関東地方整備局は2025年〜2026年にかけて複数の建設業者に対する監督処分を実施しており、法令遵守への姿勢は年々厳しくなっています。
今回の改正に違反した場合の処分がどうなるかは、施行後の運用次第ですが、許可の更新や経審の評価に影響が出ないとも限りません。
Q&A
Q1. 今回の改正は、建設業許可の更新手続きに直接影響しますか?
更新手続きの書類や要件そのものが変わるわけではありませんが、法令遵守状況が審査の前提となるため、改正後の労務費基準に違反していると許可の継続に支障が出る可能性があります。
詳細は顧問の行政書士にご確認ください。
Q2. 説明会への参加は義務ですか?
参加義務はありません。
ただし、改正内容を正確に把握する機会として非常に有益です。
行けない場合は、国土交通省の本省サイトや関東地方整備局のページで公開される資料を入手してください。
Q3. 労務費の「基準」は具体的な金額で示されるのですか?
現時点では公共工事設計労務単価などが参考値として活用されると見られていますが、民間工事への適用方法については施行規則や告示で詳細が定められる予定です。
12月の全面施行前に国交省から追加情報が出るはずですので、引き続き情報収集を続けてください。
Q4. 小規模な会社(年間完工高1億円未満)でも対応が必要ですか?
規模の大小にかかわらず、建設業許可を持っている会社であれば今回の改正の適用対象です。
下請に出す金額が少ない会社でも、自社が下請として受注する立場である以上、賃金の支払い状況を整理しておく必要があります。
Q5. 改正に対応するために社内でまず何から手をつければいいですか?
直近1年分の下請契約書を引っ張り出して、労務費の取り決めがどうなっているか確認するところから始めるのが現実的です。
契約書に「労務費相当額」の記載がない場合、今後の契約雛形を改訂する必要が出てきます。
具体的な文書の整備については、建設業法に詳しい行政書士や弁護士に相談することをお勧めします。
この記事は情報提供を目的としており、手続きの代行や法的助言を行うものではありません。
最新の情報は各行政機関の公式サイトでご確認ください。