見積書に法定福利費を書いてますか?下請企業が今すぐ確認すべきこと
結論から言います。
元請から「法定福利費を内訳明示した見積書を出せ」と言われたとき、すぐに対応できる体制になっていますか?対応できていない場合、最悪のケースでは現場入場を断られるリスクがあります。
国土交通省は平成29年度以降、社会保険未加入企業を下請として選定しないよう元請に要請しており、これは今も続いている実務上の話です。
法定福利費の内訳明示、そもそも何のため?
法定福利費とは、健康保険・厚生年金・雇用保険の事業主負担分のことです。
これまで見積書は工事費を一式や総額でまとめて記載するのが慣習でしたよね。
その中に法定福利費が埋もれてしまい、下請企業が社会保険料を実際には払えない、あるいは払っていないという状況が業界全体の問題になりました。
そこで国交省は業界団体と連携して、見積書に法定福利費を別枠で明示するルールを普及させてきた経緯があります。
具体的には、健康保険(介護保険含む)・厚生年金保険(子ども・子育て拠出金含む)・雇用保険の3種類を事業主負担分として計上します。
料率は毎年度変わることがあるため、厚生労働省や日本年金機構の公式ページでその都度確認するのが確実です。
令和6年度時点での雇用保険の事業主負担分は労働者負担より高く、業種によっても変わるので注意が必要です。
実際の見積書、どう作ればいい?
国交省の資料(国土交通省:建設業における社会保険加入対策)には、見積書への内訳明示の方法が「作成手順」として公開されています。
簡易版もあるので、まずそちらを見てみてください。
手順自体はそれほど複雑ではなく、労務費をベースに各保険の料率を掛けて合計する形です。
たとえば、労務費が200万円の工事であれば、健康保険の事業主負担率(協会けんぽの場合、令和6年度は概ね5%前後)を掛けて10万円前後、厚生年金は約9.15%で約18万円、雇用保険の事業主負担は業種によりますが建設業は約0.85%で約1.7万円といった形で積み上げていきます。
これを一行追加するだけで、見積書の体裁がまったく変わってくるんです。
現場でよくあるのが、「料率をどれで計算すればいいかわからない」という声です。
協会けんぽに加入している場合と、建設国保(国民健康保険組合)+厚生年金という組み合わせの場合では計算の元になる料率が異なるため、自社の加入状況を先に確認しておくことが大事です。
現場入場できなくなる前に確認すること
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、適切な保険に加入していることが確認できない作業員は、特段の理由がない限り現場入場を認めないとされています。
これは元請の任意対応ではなく、国交省が元請に要請している内容です。
つまり、社会保険未加入のまま現場に入ろうとすると、元請から断られる可能性が実際にあるということです。
法人であれば原則として健康保険・厚生年金への加入義務があります。
常用労働者が5人以上いる個人事業所も同様です。
ただし、建設国保+厚生年金の組み合わせは認められており、この場合は年金事務所で「健康保険被保険者適用除外承認」を取得していれば問題ありません。
自社がどの組み合わせで加入すべきかは、国交省の「適切な保険」確認シート(フローチャート形式)が使いやすいのでぜひ活用してみてください。
一人親方を使っている場合は別途確認が必要
一人親方に仕事を出している会社はとくに注意が要ります。
令和8年3月には国交省から「一人親方に関する基礎知識」リーフレットの事務連絡が出るなど、一人親方問題への対応は現在も継続中です。
一人親方が請負として働いている場合は国民健康保険+国民年金への個人加入が原則ですが、実態として雇用に近い働き方をしている場合は会社側の保険に加入させる義務が生じる可能性があります。
この判断は社会保険労務士に相談するのが確実です。
また、令和8年3月には「子ども・子育て支援金」を見積書の法定福利費にどう記載するかについて事務連絡も出ています。
料率の取り扱いが変わるタイミングは見逃しやすいので、国交省の当該ページをブックマークして定期的にチェックする習慣をつけておくといいでしょう。
Q&A
Q1. 法定福利費を内訳明示しなかった場合、罰則はあるのか?
現時点で見積書の内訳明示そのものに直接的な罰則規定はありません。
ただし、元請企業は社会保険未加入企業を下請として選定しないよう国から要請されているため、内訳明示できない=加入実態が疑われると判断され、取引継続が難しくなるリスクがあります。
罰則がないからといって放置するのは得策ではありません。
Q2. 建設国保に加入している場合、見積書の書き方は変わる?
健康保険の料率が協会けんぽと異なるため、建設国保の料率を使って計算することになります。
厚生年金は協会けんぽ加入者と同じ料率です。
料率については加入している国保組合に直接確認してください。
なお、適用除外承認を取得していることが前提なので、手続きが完了しているかどうかも合わせて確認しておきましょう。
Q3. 見積書の作成方法がわからない場合、どこに相談すればいい?
社会保険の加入制度そのものについては各都道府県の社会保険労務士会が相談窓口を設けています。
現場入場や下請指導ガイドラインに関することであれば、建設業フォローアップ相談ダイヤル(0570-004976)が対応しています。
見積書の書式については、国交省公式ページの作成手順をまず確認してみるのがおすすめです。
Q4. 令和6年に健康保険証が廃止されたが、現場での加入確認はどうなった?
令和6年11月に国交省から事務連絡が出ており、健康保険証廃止後の現場での保険加入確認方法が示されています。
マイナ保険証の活用や、保険証に代わる証明書類の取り扱いが整理されましたので、詳細は国交省の当該ページでご確認ください。
この記事は情報提供を目的としており、手続きの代行や法的助言を行うものではありません。
最新の情報は各行政機関の公式サイトでご確認ください。